公開講座 

式の利用

レッスン1  文字式の作り方


●レッスン1では 数字を文字に置き換える練習をします。 まず例題を見てみましょう。

【例】 奇数と奇数の和は偶数になることを証明せよ。

【例】 連続する3つの自然数の和は、3の倍数になることを証明せよ。

●このような問題を文字式を使って証明するには、「奇数」とか「偶数」とか「3の倍数」とか・・・これらを文字を使って表すことが出来ないと証明は書けません。  たとえば 
  • 偶数  ならば  2m とか 2n   と表せる
  • 奇数  ならば  2m+1 とか 2(  )+1  と表せる、
  • 連続する3つの整数は ・・・・・・・

というようなことが分かっていないと、証明が書けないわけです。 そこで このレッスン1では、いろいろな種類の数字文字式で表す方法を学習します。


●次のステップ1〜ステップ3の例を1つ1つ読んで、パターンをいくつか覚えてもらいます。




【ステップ1】 偶数・奇数・倍数  などを表すには

偶数は …   2m、    2n、   2(  )      などと表せる。
奇数は …   2m+1、 2n+1、 2(   )+1  などと表せる。
3の倍数 …  3m、    3n、   3(   )     など…
5の倍数 …  5m、    5n、   5(   )     など…

●「偶数」とは 2の倍数のことですから 必ず 2×(整数) という形にすることが出来ます。 (例:14=2×7、 68=2×34 など)
  ですから、文字で表すときは 2m、2n、とか 2(   ) という形にします。 別のいい方をすると
  • mが整数 なら   2m は 必ず 偶数になる。
  • n が整数 なら   2n  は 必ず 偶数だ。
  • (  )の中身が整数なら  2(  ) は 必ず 偶数だ
ということです。 また逆に
 全ての偶数は 2m、2n など で表すことができます。
 たとえば 34 は たまたま m=17 だったということです。(2m=34)


●「奇数」とは 2で割ると1余る数のことですから 2の倍数+1 ということですね。 つまり 2m+1 、2n+1、 2(  )+1 などと表せます。 たとえば 17 は たまたま m=8 だったのです。 2×8+1=17

●3の倍数は 必ず 3×(整数) という形になりますから、
    3m 3n 3(  ) などと表せる 
ということになりますが、 そろそろ分かってきましたか?


●ところで、 2(  ) とか 2(  )+1  の (  )は 何を表すのでしょうか? これは簡単に言うと、証明の最後に使う形だということです。 たとえば

問題が
 奇数 と 奇数 の 和は  偶数になることを証明せよ。

ということであれば 初めの 「奇数奇数」 は 2m+1、2n+1 とおき、 最後の 「偶数になる」 という部分は  2(   ) で表す努力をする、 ということです。 (ちょっと分かりにくいかも知れませんが、そのうちに理解できるようになりますので、ここではあまり気にしないでおいて下さい。)

●ではクイズです。 
クイズ@: 9の倍数はどのように表せるか? 
       上の例を参考にして 3種類 書きなさい。
          ___  ___  ______ 

答はこちら





●では 次のパターン。
3で割ると1余る数は  … 3m+1、 3n+1、 3(  )+1 
3で割ると2余る数なら … 3m+2、 3n+2、 3(  )+2

3で割ると1余る数というのは 7 とか 31 などですよね。
これらは 7=3×2+1、  31=3×10+1 というように3の倍数に1を加えたものと考えます。 (つまり 3m + 1 など)


●では またクイズです。

クイズA:
  5で割ると3余る数は? ____ ____ _____

答はこちら





【ステップ2】 2ケタ(桁)の整数、 3ケタの整数 を表すには

2ケタの整数 は ・・・・・・・・ 10a + b    とおける。
   (ただし、十の位の数字をa, 一の位の数字をb とする)


●2ケタの整数というのは 15 とか 49 とかですよね。 
全部で 10〜99まで90個 ありますが、 10a+b はこれだけで 2ケタの整数90個を 全て表すことが出来ます。
たとえば 53 なら たまたまa=5, b=3 だったのだ と考えればいいですし、 a=2、b=0 を使えば 20 という数字を作れます。

●さらに 
この2ケタの数字(10a+b)の 十の位と一の位の数字を入れかえた数字は ・・・・・  10b+a   と表せる。

●たとえば 53の 十の位と一の位を入れ替えると 35 ですが、
  元の数が 10a+b なら  → 入れ替えると 10b+a となります。

●さらに もう一歩進んで
3ケタの整数は ・・・・・・ 100a+10b+c  などと表せる。
   (ただし、百の位の数字をa、十の位をb, 一の位をc とする)


●ではまたクイズ!

クイズB:   
 上の3ケタの数字(100a+10b+c)の 百の位と一の位を入れ替えた数字はどのように表せるか?

                   ____________

答えはこちら






【ステップ3】 連続した数 を表すには

注意:この場合、文字を1種類だけ使うことに注意して下さい。)

連続した2つの整数(たとえば、4と5,17と18など) は
        n、  n+1     などと表せる。

連続した3つの整数(たとえば、3と4と5 など ) は
     m、 m+1、 m+2    などと表せる。

連続した 2つの奇数 (たとえば 5と7,とか 11と13とか)は
    2m+1、 2m+3      など と表せる

●連続する2つの数(たとえば3,4)は 小さい方の数字を m とおくと、 大きい方は m+1 となることは分かりますね。 逆に 大きい方の数字を m とおくと 小さい方の数字は m−1 とおけます。

●連続した3つの数(3,4,5など)は 3つに増えるだけですから、
      m、 m+1、 m+2     となりますよね。 

●連続した2つの奇数 は たとえば (7と9) (13と15) でわかるように、差が2ですから 、 小さい方の奇数を 2m+1 とおくと
      2m+1 、 2m+3  
となりますよね。

●ではクイズ!

クイズC:
  連続した 2つの偶数はどのように表せるか?

答はこちら





●では 今の時点で 次のようなことを 疑問に思っていたら クリックして解説を読んでおきましょう。
  • 文字を m とか n ではなく、 y とか t とか使えないの?
  • 「2つの偶数」を 2m と 2m と同じ文字でおいてはダメなの?
  • 連続した3つの整数を m、k+1、n+2 とかは おけないの?
  • 連続した3つの整数を、 m−1, m、 m+1 とおくのはいいの? 



●では これまでのことをまとめてみましょう。

文字のおき方例 一覧表
偶数は …   2m、    2n、   2(  )      など
奇数は …   2m+1、  2n+1、 2(   )+1   など
3の倍数 …  3m、    3n、   3(   )     など
5の倍数 …  5m、    5n、   5(   )     など
9の倍数 …  9m、    9n、   9(   )      など

3で割ると1余る数は … 3m+1、 3n+1、 3(  )+1 
3で割ると2余る数は … 3m+2、 3n+2、 3(  )+2
5で割ると3余る数は … 5m+3、 5n+3、 5(  )+3

2ケタの整数 は ・・・・・・・・ 10a + b 
十の位と一の位の数字を入れかえた数字は ・・・・・10b+a
3ケタの整数は ・・・・・・ 100a+10b+c
            (ただし、a,b,c は1桁の整数とする)

連続した2つの整数  …   n、  n+1     など
連続した3つの整数  …   m、 m+1、 m+2   など
連続した 2つの奇数 …   2m+1、 2m+3    など
連続した 2つの偶数 …   2n、 2n+2  など

だいたい頭に入りましたか? 暗記する必要はありませんが、「こういうときは このように表す」ということを理解しておいて下さい。



●ではチェックテストです。まずは文字式の おき方の練習から

【問題1】 次のような言葉があったら 文字式をどのように置くか、例にならって書きなさい。 ※(  )のただし書きも書いてみましょう。

(例) 2つの偶数がある → 2m 、2n とおく (ただしm、nは整数)

(1) 偶数と奇数がある。
(2) 連続した2つの整数がある。
(3) 連続した2つの奇数がある。
(4) 3ケタの整数がある
(5) 5でわると3余る数と 5で割ると2余る数 がある。

答はこちら





●次に 結論の導き方の練習。 これはまだ詳しい説明をしていないのですが、あとで説明しますから、とりあえず下の【問題2】をやってみて下さい。(解らなければ答を見ても構いません)

【問題2】 次の様なことを証明したいとき、どのような(  )を作るべきか、 例にならって答えなさい。

(例) 7の倍数であることを証明する → 7(  )をつくる

(1) 奇数であることを証明する
(2) 11の倍数であることを証明する
(3) 3で割ったら2余る数であることを証明する
(4) 9で割り切れることを証明する
(5) ある整数の2乗になっていることを証明する(3年のみ)

答はこちら




●ところで 上の問題の例で
 
  7の倍数であることを証明する → 7(  ) をつくる

とありますが、7(   ) を作るといっても 具体的にどうすることか、今の時点では分かりにくいかも知れませんので、これをちょっと説明しておきます。 
 m と k が整数だと分かっているとき 7m+14k は7の倍数になります。 なぜなら 7m も 14k も7で割りきれるので、

    7m+14k = 7(m+2k)  

と表せます。 そして (  )の中身 m+2k は整数だから 7(m+2k) は7の倍数だと分かるのです。 同様に

   3m+6n−9 = 3(m+2n−3)  → 3の倍数といえる

   3m+15n+2 = 3(m+5n)+2 →3で割ると2余るといえる。

●ここまで進んできたあなたはもう、次のような問題が出されても、びっくりすることはないと思います。

 奇数 と 奇数 の差は 偶数であることを証明せよ。

あなたがやることは、
  1. まず 2つの奇数を 2m+1, 2n+1 とおき
  2. 「差」つまり 引き算をして
  3. 最後に 2(   ) という式を作る努力をする
ということだ、と理解できると思いますが、どうでしょうか?
これを 簡単に書いてみましょう。

2つの奇数を 2m+1、2n+1 とおくと、その差は

  (2m+1)−(2n+1)= 2m+1 −2n−1
                = 2m−2n
                = 2(m−n)

        ほら 偶数の形になったでしょ!

これをもう少しきちっと書けば 答案として認めてもらえるのです。





●レッスン1はこれで終わりです。 レッスン2では、答案の書き方の練習をします。


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