期待値 の 確実な解き方

 ( 高校数学 ショートアドバイス )


●「期待値」が苦手だ、という生徒さんには2つのタイプがあります。
  1. 確率そのものが苦手 という人
  2. 確率は何とか分かるけど 期待値になるとダメという人
この講座は (B)の生徒さんを対象に作ってあります。  (A)の生徒さんは、確率に自信をつけてから読んで下さい。

●期待値を 「何となく解きにくいジャンルだ」 と思っている人が時々いますが、それは 大きな間違いで す。 わかりにくいときは 縦4段の表を書けば「確実に」解くことが出来ます。
 縦4段の表というのは 下図のようなものです。 数学的に言うと 確率分布表のようなものですが、言葉のイメージほど難しものではありません。
▲▽
 1段目の「事象」というのは、どのような場合が存在するか ということ。 

2段目のは、確率変数と呼ばれるもので、問題によって、得点だったり、賞金だったり、枚数だったりします。 「得点の期待値を求めよ」という問題では 得点 となります。  

●実際の問題では、「事象」と「確率変数」は 問題文に書いてありますから、結局「確率」の部分さえしっかり出来れば、期待値は 自動的に出てくるようになっているのです。

●では 具体的な問題を使って、説明しましょう。

【例題1】
サイコロを1回ふり、1が出たら10円、2が出たら20円、3が出たら40円、4が出たら60円、5が出たら80円、6が出たら0円獲得出来るものとする。獲得賞金の期待値はいくらか?

(手順1) まず 事象(1,2,3,4,5,6)と  それぞれの賞金( 10, 20, 40, 60, 80, 0 )を書き込みます。 
▲▽
(手順2) 次に確率を計算しますが、この問題は計算するまでもなく、全ての場合の確率が 1/6 (6分の1) ですからそう書き込みます。
▲▽
 (手順3) 次に XP を掛け合わせて 4段目に書き込みます。
▲▽
最後に4段目の合計を右端に求めてください。(↑上図参照)
ここで出てきた合計  ( 210/6 )  すなわち 35円が期待値です。

●特に難しいことはないでしょう? では次の例題に行きます。

【例題2】
コインを3枚投げたとき、表が出る枚数の期待値を 求めよ。


(手順1) この問題の場合は 事象確率変数が一致しています。 つまり事象は 

3枚、2枚、1枚、0枚

また 枚数の期待値ですから、確率変数も枚数で

3、 2, 1、 0

です。(0枚を忘れないように)
  (手順2) 次に確率 です。  左から順に
▲▽


(手順2) 次に確率 です。  左から順に
 となるのですが、わからない人のために、図を2種類 用意しました。 図を見て、なぜそうなるかを確認して下さい。 ( わかる人は 飛ばしてかまいません。)


▲▽




●この程度の確率であれば、上のような図を描くのが一番早いですが、 どうしても 数式で求めたい、と言う場合は 下のような数式を用います。


これを   = 3,2,1,0 と計算すると 

▲▽


これを  3,2,1,0 と計算すると 




● 確率がわかったら それを書き込み、 下表のようになります。
▲▽
●さらに4段目の × を計算し、 その合計を求めると
▲▽
 ●つまり枚数の期待値は 1.5枚 と言うことになります。
 ●では少し難しい例題を解きましょう。

注意:問題文を読みながら、必ず図を描いて下さいね。

【例題3】 
赤球4個
白球3個がはいっている袋の中から 3個の球を同時に取り出すとき、  赤球1個につき10点、 白球1個につき−5点 と計算するとき、得られる得点の期待値を求めよ。

 ここから 事象は4つだとわかります。
▲▽

●この場合 確率がやや面倒ですので、とりあえず表には事象と、得点のみ記入しておきましょう。
▲▽
●さて確率ですが、 ここでもう一度、 先ほど描いた図をみて、 
▲▽

注意: このあたりの確率の出し方がピンと来ない人は、まだ確率があやふやな人ですから、「期待値」をやる前に、確率の基礎をやり直してから、再度この講座にトライした方がよいと思います。

▲▽
●これらの確率を表に書き込んで、を求め、 期待値を出すと
▲▽
●ところで、今回のように 確率の計算が面倒なときは、計算ミスをしていないかどうか確認するために、確率の合計が1になっていることを確かめるのが確実なやり方です。



●このように、期待値の問題は、
(手順1)
問題文から事象の種類と 確率変数 (得点・賞金など) を読み取り
(手順2)
それぞれの事象の確率を求め
(手順3)
確率変数と確率の積を計算する
という作業をすることです。 そしてそれには 縦4段の表を使えば比較的楽に答えを出すことが出来るということをお伝えしたかったわけです。  繰り返しになりますが ポイントは 確率 がちゃんと出せるかどうかという点です。

●基礎編の解説はこれで終わりです。 下に基礎レベルの問題を4問出しておきましたので、利用して下さい。 また自分の問題集で実際に解いてみて下さい。

追記 : なお、もう少しレベルが高くなって、 確率変数の分散を求めよ とか いう言葉がでてくる問題の場合も 少し工夫すれば同じように求めることができますのでやってみて下さい。 これについてはいつか、新しいページを作って解説したいと思います。


【 基礎編 練習問題 】

【問1】
袋の中に白球5個、赤球4個、黒球2個が入っている。この袋から同時に2個の球を取り出し、白球、赤球、黒球について、それぞれ30円、50円、100円もらえるものとする。このときもらえる金額の期待値を求めよ。

問1 答はこちら


【問2】
○、×で答える問題が5問出題されている。5問とも合えば10点、4題なら5点、3題なら2点、2題以下なら0点という採点法をとる。 まったくでたらめに○、×をつけた人の点数の期待値を求めよ。

問2 答はこちら



【問3】
さいころを5個投げて、1の目がm個出たらm点もらえるという試行を1度おこなうときの得点の期待値を求めよ。

問3 答はこちら



【問4】
1つのサイコロを2回投げて、出た目を順に10の位、1の位の数として、2桁の数χを作るとき、χを4で割ったときのあまりの期待値を求めよ。 (福島県立医大)

問4 答はこちら



 

塾長の 他の教材・講座
高校 世界史 年表ノート



ホームへ  

 Copyright (C)  since 2001  ARAKI, Shin-ichi  All Right Reserved.