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          ■高校・学力改造講座■      第1回
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数学 格闘編(高校数学に対する誤解をときほぐそう)

◆格闘編(全7回)は主に高校1,2年生を対象に日頃の勉強について、お話ししたいと思います。


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 格闘編  第1回   数学は暗記科目なの?
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Q.数学は暗記教科なの?

A.そうです。

●数学はまさに暗記教科です。 少なくとも高校の数学に関してはそういえます。解き方を覚えてない問題は、どんなにがんばっても解けません。


●以前、精神科医で教育評論家の和田秀樹さんという方が「数学は暗記だ」という内容の本を出されて議論になったことがありました。賛否両論ありましたが、私の現役時代の経験、生徒を教えてきた経験から出てくる結論も「高校数学は暗記教科である・・・○(マル)」です。 というより「記憶の教科」でしょうかね。 


●私は高3の夏休みまでそれに気づきませんでした。学校の先生の「数学は答えを覚えてもだめなんだよ。 論理的に考える学問だからね」 という言葉を信じて疑いませんでした。 その結果、数学は苦労しました。それに対して私の嫁さんは高1の時に「数学は暗記だ」と悟ったらしく、数V・C までばっちりだったといっています。(ただし、暗記といっても、答を丸暗記することではありません。この手の問題はこのような解き方をする、という「解き方」を覚えることです。)


●具体例を見てみましょう。次の問題を考えて下さい。

     問題:「ルート2が無理数であることを証明せよ。」

「なーんだ、そんなの解けるよ」と思う人と、「あー、そういえばそんな問題があったなあ。でも、もう忘れた。」と言う人、そしてひたすら「????」の人といると思います。そこで「解ける」と思った人に質問します。



Q1 あなたはこの問題を見たのは初めてですか? 
                   (たぶんNOでしょう)
Q2 あなたが初めてこの問題を見たとき、自力で解けましたか?
                   (たぶんNOでしょう)
Q3 あなたはこの問題の解き方を(ある程度でも)覚えてますか?
                   (たぶんYESでしょう)



つまりこの問題を解くカギは「解き方を覚えている」ということです。


●この問題の解き方を知らない人は、どんなに考えてもこの問題は解けません。普通の高校生なら99.9%無理です。(だた世の中には残りの0.1%がいるから怖いんですがね…)しかし、参考書で見たりして解いたことがある人、解き方を覚えている人なら、ちょっと変形して「ルート5が無理数であることを証明せよ」という問題が出てきても、見た瞬間「解けそうだ」となるわけです。


●しかしこんな人もいるでしょう。「私、暗記科目は得意なのに、数学は苦手だよ!」って人。確かに世界史や日本史と数学とは大きな違いがあります。ただしそれは、暗記するものの質が違うと言うことに過ぎません。たとえて言えば、年号を100個覚えるのと、短いお話を30話覚えるのとの違いみたいなものでしょうか。そうです、数学は「ストーリーを覚える教科」といえるでしょう。


●「お爺さんと、お婆さんと、桃」という条件があったら、「ああ、鬼ヶ島を退治するお話ね。」と考え、「正直じいさん、意地悪じいさん、ポチ」ときたら、「ああ、花咲じいさんね。」と考えるようなものです。すると「うさぎ、たぬき、泥の船」と来れば「ああ、カチカチ山ね。するとストーリーは…」となるわけですが、この話を知らない人は0点ですし、忘れた人も0点、ちゃんと覚えている人は点数がもらえるわけです。


●ところが中学の時と違って、高校では覚えなければならないストーリー(パターン)が、べらぼうに多いというのが特徴です。ですから、前のことを覚えきれないうちに、次のことを習い、それをうろ覚えの頃に、さらに次のことを習って、すぐに試験…という気がしませんか?あなたが、高校の数学にうまく適応できてないとすれば、その最大の原因は、膨大な情報量に対応できてないことにあると思われます。

ちなみに覚えなければならない解き方の種類は
 ・文系で600〜800種類
 ・理系で1000種類以上
と何かの本で読んだことがあります。 私の経験でもこの数はそれほど的はずれの数字ではないと思います。(参考書の例題数ともほぼ一致します。)


●ところで、私が現役時代にやった最大の間違いは、「答えを見てしまうことに罪悪感を持ったこと」です。「もうちょっと考えればわかるかもしれない」「わからないのは何かを気づいてないからだ・・・」という感じで、時間を浪費していたのです。まさに、「馬鹿な考え休むに似たり」というやつですね。 今から思えば、さっさと答えを見て、その解き方を徹底的に覚える努力をこそ するべきだったのです。


●学校の先生のおっしゃってた「論理を追求する」というのは、解き方を覚えていく過程で「なぜそうなるのか、なぜこの条件が出てくるのか」ということを考えることであって、わからない問題に白紙の状態から立ち向かって時間を浪費することではなかったのです。 わからない問題に30分かかわっているよりは、2つの新しい問題の解き方を覚え、1つの忘れかけた問題を復習する方が、高1,高2の段階では効率的です。(受験勉強となるとまた少し話は違って、じっくり時間をかけて解くという作業が必要になりますが、それは解き方をほとんど覚えてからやる作業です。)


●先ほどの「ルート2が無理数である証明」の問題も、わからなければ(初めてみた問題なら)、すぐに答えを見て、その解き方をじっくり研究し、改めて自分で解いてみる、という作業をしなければなりません。(答案を写して終わり、ではだめですよ) そして忘れかけた頃にまた復習してみる。つまり、ほかの暗記教科と一緒で、繰り返し覚える努力、忘れない努力をしなければなりません。


●高校生を教えていて気づくのは、「次から次に新しいことを習うので3ヶ月前、半年前にやったことを忘れていて、問題が解けないことが多い」ということです。ですから、「ルート2が無理数である証明」を今日やっても、一週間後にはうろ覚えの状態、3ヶ月後には「やったことがある」という記憶しか残っていない状態になります。 


●数学に自信のないあなた! 数学は暗記教科(記憶力勝負の教科)だということを肝に銘じて、予習だけでなく、復習にも時間を割いてください。 そして、解けたと思った問題も、3日後には解けなくなりますから、繰り返し繰り返し解いてください。



(原則)
数学は暗記教科である。覚えてない問題は解けない。忘れた問題も解けない
(対策)
繰り返し解いて、忘れない努力が必要だ。



【付録】高校数学と記憶力の関係
数学は「本来」、記憶力勝負の学問ではありません。それは私もわかっています。しかし学力改造講座の第1回目に「数学は暗記教科だ」とわざわざもってきたのは、数学という学問自体と、高校数学とはちょっと違うと思うからです。単純に言うと大学受験までの数学は「記憶力の良い生徒が勝ち!」の教科です。つまり他の教科と同じなのです。論理的な頭とか、数学的なセンスとか、そういったことよりまずは記憶力!そんな気がします。あなたの高校で数学が出来る友達を思い浮かべてください。記憶力は全然ないけれども数学だけはひらめきとセンスだけでどんどん解ける、という人はいますか?もしいたとして、そのひらめきってどこから来るの?神の啓示?…いえいえ、やはり頭のどこかに何かを覚えているのですよ。

先ほどちょっとお話しした私の嫁さんにもう一度登場してもらいましょう。彼女は決して論理的でも発想が豊かでもありません。逆に「頭が固い」と周囲の人から言われる、と本人は言っています。(確かにそうだ!)しかし記憶力は抜群によいのです。「○月○日、パパは〜に行った」「誰々がいついつ、どこどこで○○した、と新聞に書いてあった」・・・・まあ、良く覚えていられるなあというくらい記憶しています。その記憶力の持ち主が、高校時代は数学大得意、英語、国語ぼろぼろという状態だったらしいのです。この事実だけをとっても、数学は記憶力が良いほど有利、ということがわかると思います。




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